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ラタトゥイユをマスターすれば麻婆豆腐もおいしくなる!?


濃縮還元100%リンゴジュースなど、スーパーや自動販売機でよく見かけますよね。なんとなくリッチなイメージがある言葉ですが、みなさんは意味、ご存じですか?(私は知らなかったです^^;)



「濃縮還元とはよくジュースに使われる技法なのですが、料理にもかなり活かせる考え方なんです」と話してくれるのは、安藤コーチ。「野菜の味わいを引き出すために、一度食材の水分を極限まで抜き、それを液体で戻した際にはフレッシュの状態よりも、味わいが何倍にも濃く感じる技法のことを『濃縮還元』といいます。」



濃縮還元を応用した料理を通して、momentのコーチングで実際にどのような学びがあるのかをご紹介します。


momentコーチ:安藤曜磁(Ristorante QUINDI元料理長)

京都のリストランテ「イルギオットーネ」に9年間勤務。その後、都内数店で料理長としてキャリアを積む。2018年より、「Ristorante QUINDI」の料理長を務める。一般社団法人Japan Food Frontierの理事も務め、こどもに向けての料理教室も行っている。


目次

  1. momentコーチ:安藤曜磁(Ristorante QUINDI元料理長)

  2. ラタトゥイユ

  3. ビーフシチュー

  4. 麻婆豆腐


 

■ラタトゥイユ


  1. コーチングテーマ:料理に奥行きをだす技法

  2. 身につけられるスキル:焦げを操る

  3. 理想の仕上がり:冷ました際にも、強いコクを感じられるラタトゥイユ

  4. 試すこと:トマトの周りに焦げが付きだすくらい濃縮させてから、水で伸ばす



安藤コーチ:

「ラタトゥイユの場合、トマトの甘味を凝縮させたものを水で伸ばすことで、さらにその味わいが増したスープが出来ます。

その際に必要なのが、軽く焦げを作ってあげることです。その焦げは強火で炒めた際に出来る焦げではなく、じっくりと水分を抜いた後に周りがじわじわと焦げ付いていくものです。野菜から出た砂糖でべっ甲飴を作るイメージです。

出来た焦げは、普通に水分を煮詰めただけの凝縮よりを何倍もコクが増した味わいになります。そしてトマトなどの糖分が多い野菜はとても適しているので、ぜひ実践しましょう。もんじゃ焼きを焼いていく際に出来るおこげをイメージして、トマトを煮詰めていきます。」


■ビーフシチュー



  1. コーチングテーマ:旨味を各素材から引き出す技法

  2. 身につけられるスキル:各食材の味の濃さを火入加減で調整する事で一体感を持たせる

  3. 理想の仕上がり:全ての要素が濃く主張してくる濃厚な味わいだが、重すぎず、程よい甘さと酸味を感じられるビーフシチュー

  4. 試すこと:先にそれぞれの食材をそれぞれ煮詰めて、水で伸ばして煮込む


安藤コーチ:

「今回のテーマも『究極の濃縮還元』です。なぜ究極かというと、煮込む前に一度全てを濃縮させてから煮込み、また仕上げに煮詰めて濃縮させるからです。この濃縮感というのは煮込んでから濃縮させるだけでは足りません。先にそれぞれの要素の濃縮を行ってそれを煮込む事で、水っぽくない状態にすることが大切です

肉を焼くことも、野菜にメイラード反応を起こす事も食材の濃縮をしているのです。赤ワインに関してはツヤが出てとろみがつくまで、デミグラスソースも同様に少し焦げつくくらいまで、トマトソースは、ラタトゥイユでやったように、もんじゃ焼きの要領で煮詰めましょう。そしてピュレのように煮詰まった食材を肉が潜る程度まで水で伸ばして煮込んでいきましょう。

ただ、ビーフシチューの大切な点は、具材は具材としても美味しいという事です。

例えば、玉ねぎやにんじんなどの野菜は、極限まで炒め煮をすると、具の原型は残らなくなってしまうので、半分はしっかりとあめ色になるまで、もう半分は具材としてのハリを残すくらいの焼き具合、というようにバランスを火入れ具合で調整してみると良いかと思います。

食材は食材としてベストな火入れを目指しながら、一緒に煮込んで味わいをスープに煮だすことを目指しましょう。」


■麻婆豆腐



  1. コーチングテーマ:調味料の風味を引き立たせる技法

  2. 身につけられるスキル:焼き色をつけることで調味料の風味を引き上げる

  3. 理想の仕上がり:凝縮させた食材の濃い味わいと引き立った風味を餡で閉じ込め、口に入れた瞬間に食材や調味料全ての香りと味を感じられる麻婆豆腐

  4. 試すこと:炒めている肉の真ん中に調味料を入れて、一気に醬の風味を引き上げる


安藤コーチ:

「焼き色を付けて風味をグッと引き上げるのは、お肉だけでしょうか?いえ、調味料でも同じことが言えるんです。焦がし醤油や焦がしバターといわれる隠し味はまさにこの焼き色を付ける事によって調味料の風味をグッと引き上げています。今回は醤もしっかりと炒めてあげる事でもっと風味が引き立ちますし、肉にまとわせて炒めていくよりも、フライパンに直接当てながら炒めたほうが短時間で一気に香ばしさや風味が引き立って、効率が良いです。時間がかからない事がまさに麻婆豆腐の醍醐味で、引き立てた風味を損なわずに手早く閉じ込める事に繋がります。

フライパンで炒めた肉を広げて真ん中が開いたドーナツ状にし、真ん中のフライパンがむき出しになった穴の部分に調味料を入れてジューっと一気にかき混ぜながら凝縮させ香りを立てていきましょう。だんだんと周りがじゅわじゅわして、粘りのある見た目になってきます。調味料の濃い香りや香ばしさが引き立ってきたら、周りの肉と一緒に混ぜて、水を入れて伸ばしましょう。この調味料を入れてから短時間で凝縮させる事が出来れば、更に風味の引き立った麻婆豆腐になっていると思いますよ。」



 


一見全くジャンルの違う3つの料理を深掘りするだけでも、それぞれに共通する繋がりが見えてきました。肉や野菜、ワイン、フォンドボーを煮詰めて濃縮させていくことで、食材のコクが深まり、旨味や美味しさが出てきます。濃縮還元は汎用性が高く、このほかにもカレーやきんぴらごぼう、魚の煮付けなど、さまざまな料理シーンで登場しています。


momentでは、「今回の学びは、他の料理に応用しましたか?」と頻繁に学び手さんに問いかけるのですが、それは「この料理を美味しくする」だけで終わってほしくないからです。課題料理は教材に過ぎず、それを使って他の料理も美味しくなる。どこでも活かせる「一生モノのスキルを身につける」ための料理思考トレーニングでもあるのです。



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